住宅2021年11月22日
住まいの快適な環境を保つ断熱性能
~断熱材の種類とそれぞれの特徴・メリット・デメリット~
「住まいの快適な環境」と聞くとどの様な環境を思い浮かべるでしょうか?
・夏涼しくて冬温かい家・・・でも冷暖房費は節約したい
⇒夏の熱い外気が家の中に入ると冷房の効きが悪くなる、冬は冷たい外気が家の中に入ると暖房の効きが悪くなる
⇒冷暖房費が高くなる
⇒屋根・壁・床に断熱材を入れる、窓も窓枠をアルミフレームではなく樹脂フレームにしガラスもペアガラスにするなどして外気の影響を受けにくくする
⇒部屋ごとの温度差が少ないためヒートショックの防止につながる
・24時間換気がされていて空気がきれい
⇒2003年7月15日に改正建築基準法が施工されシックハウス対策として「台所・浴室・洗面所・トイレだけではなく、すべての居室で24時間換気可能であること」が義務付けられた
⇒2003年7月15日以降に建てられた住宅には窓を開けずに「給気」「排気」可能な24時間換気システムが取り付けられている
⇒室内温度が外気温度に影響されにくい
⇒冷暖房費の節約
⇒さらに窓やサッシに発生する結露によるカビも減らせる
⇒建物を傷めて寿命を短くし、さらにカビが発生しコンセントなどから部屋に侵入して健康被害を及ぼす壁内結露を防止するには湿気を含まない断熱材を使う
「住まいの快適な環境」を保つためには高気密・高断熱・換気が重要です。ここでは断熱材についてまとめてあります。
断熱の工法としては「外張り断熱」「充填断熱」があります。
「外張り断熱」とは柱などの構造材の外側からすっぽりと断熱材で覆う工法です。
「充填断熱」とは柱などの構造材の間にボード状またはシート状の断熱材を入れたり、液状の断熱材を吹き込み充填する工法です。
断熱材の種類とそれぞれの特徴・メリット・デメリット | ||
無機繊維系断熱材 ガラスや岩を細かく繊維状にして、その間に閉じ込められた空気の層が熱を遮り断熱効果を生む、広く普及している |
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グラスウール |
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特徴 | ・繊維の密度を高め、厚みがあるほどグレードがアップする | |
メリット | ・価格が安い ・ガラス繊維なので燃えにくい ・防音効果がある |
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デメリット | ・湿気に弱い⇒湿気対策が必要 ・他の断熱材と比べると断熱性がやや低い |
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ロックウール |
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特徴 | ・グラスウールよりも断熱性に優れている | |
メリット | ・撥水性が高い ・鉱物系繊維のため燃えにくい ・防音性に優れている |
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デメリット | ・湿気に弱い⇒湿気対策が必要 | |
木質繊維系断熱材 間伐材や古材などの木材、新聞紙や段ボール等の古紙が主な原料、地球や体に優しい |
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セルロースファイバー |
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特徴 | ・新聞紙など(パルプ)をリサイクルしできている。防火性を高めっるためにホウ酸を配合する | |
メリット | ・調湿性に高く結露を防ぎやすい ・綿状のため、わずかなスキまでの施工も可能 ・防音効果がある ・ホウ酸の効果でゴキブリや白蟻などの害虫を寄せ付けない ・防火性能が高い |
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デメリット | ・価格が高い ・施工には専門業者を探す必要がある |
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天然素材系断熱材 主流ではない断熱材だが健康を意識した健康住宅など注目の素材 高温多湿な日本の気候に適した素材 |
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羊毛(ウールブレス) |
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特徴 | ・原料となる羊毛に防虫処理を施しており、その防虫効果は半永久的に続く | |
メリット | ・優れた断熱性能⇒羊毛の隙間にたくさんの空気を貯めるため ・内部結露を防ぐ⇒湿気を吸っても表面はサラサラに乾いた状態を保つことができる ・濡れても乾きが早い⇒渇けば断熱性能が戻る ・耐久性が高い⇒長寿命住宅の断熱材に向いている ・優れた防音性⇒空気をたくさん吸っているので吸音性に優れている ・難燃性がある⇒燃えにくく延焼しにくい、有毒ガスも発生しない ・防虫効果は半永久的 |
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デメリット | ・価格が高い | |
炭化コルク |
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特徴 | ・ワインの栓等の製造過程で余った端材を利用し、炭化させた断熱材 *宇宙船の断熱材にも用いられている |
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メリット | ・断熱性能に優れている⇒空気がたくさん含まれている ・調湿性が高く壁内結露を発生しにくい ・防虫効果がある⇒コルク樫の木にはスベリンと言う天然の防虫成分が含まれている ・吸音性がある⇒炭化コルクには音を吸収する性質がある |
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デメリット | ・価格が高い | |
発泡プラスチック系断熱材 優れた断熱性、施工のしやすさで人気がある 湿気に強いものもあり近年注目を集めている |
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硬質ウレタンフォーム |
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特徴 | ・ポリウレタン樹脂に発泡剤を加えたもの ・ボード上の素材の他、現場で吹き付けるタイプのものもあり「自己接着性」があるのが特徴⇒接着剤を使わずとも強く接着して断熱層を作る |
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メリット | ・断熱性に優れている⇒気泡に含まれた小さなガスが熱の伝導を抑える⇒省エネ効果が高い | |
デメリット | ・価格が高い ・燃焼時には有毒ガスが発生する可能性もがある |
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フェノールフォーム |
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特徴 | ・フェノール樹脂に発泡剤を加え、ボード状にした断熱材 | |
メリット | ・経年劣化がしにくい⇒耐久性が高い ・プラスチック系の中で特に断熱性能が高い ・非常に燃えにくく、燃焼時にも有毒ガスが発生する心配がほとんどない |
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デメリット | ・価格が高い | |
ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS) |
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特徴 | ・発泡プラスチック断熱材 ・ポリスチレン樹脂をビーズ状にして発泡させた断熱材 |
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メリット | ・断熱性が高い ・耐水性に優れている ・施工がしやすい ・軽量であり衝撃吸収性に優れている ・プラスチック系断熱材の中では価格は安価 |
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デメリット | ・燃えやすい⇒90度前後の熱に弱い | |
押出法ポリスチレンフォーム(XPS) |
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特徴 | ・ポリスチレン樹脂を発泡させながら押し出して堅いボード状にした断熱材 | |
メリット | ・断熱性が高い ・耐水性に優れている ・施工がしやすい ・軽量であり衝撃吸収性に優れている ・プラスチック系断熱材の中では価格は安価 |
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デメリット | ・燃えやすい⇒90度前後の熱に弱い ・価格が高い |
各ハウスメーカーで採用している断熱材と工法はそれぞれですそれぞれにメリット・デメリットはあります。各ハウスメーカーともデメリットをカバーする施工をしています。たとえばグラスウールのデメリットは湿気に弱い⇒湿気対策が必要、他の断熱材と比べると断熱性がやや低いとありますが、透湿・防水・遮熱シートを張りデメリットをカバーしメリットに変えています。大事なことはどの断熱材が良いのかということよりも、デメリットをカバーしメリットに変える施工をしているハウスメーカーを選ぶことです。